「女だらけのヨネケン(米倉けんご)座談会...
TOP
「エロマンガノゲンバ Vol.1」発見!...

2009
「成年コミックマーク」の歴史
Check


ども、稀見理都です。

今回はコミケ前に書こうと思っていたネタを… と思ったら、意外に資料集めに時間がかかり、コミケ作業もあって後回しにしていたら、なんと「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」さんが、ほぼ同時期に同じような事を先に書いてしまったので、かなり動揺(^_^;

若干ネタが被っていたので、それ以外の部分で少し語りたいと思います。そうです、今回のネタは「成年コミックマーク」についてです。

あ、ちなみにタイトルイメージの赤い丸の部分の秘密は最後に…(。・ω・)ノ



■確かにいろんなタイプがある「成年コミックマーク」



「成年コミックマーク」。そうです、エロマンガの表紙に載っている、黄色い楕円形のマークです。といっても、実はいろんな形があります。

これについての考察は「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」さんが非常によく『エロ漫画の「成年コミック」マークを考える』という項目で考察されています。すばらしい記事なので、是非読んでみてください。

単なる邪魔なマークではなく、それはそれとして作品の中の表現として「成年コミックマーク」を使っている作家さんもあるというのは、私もよく知りませんでした。

私のほうは、形状と言うよりは主にこのマークができた背景と、その当時の混乱ぶり、そもそも「成年コミックマーク」とはどういう役割を果たしているのかという部分を少し述べたいと思います。



■「成年コミックマーク」はあくまでも自主規制

よく聞く誤解なのですが「成年コミックマーク」は何らかの承認マークではありません。AVにおける「映倫日映審(旧ビデ倫)」のような審査機関があり、このマンガは成年(18禁)じゃないと読めない本だ!という、何らかの判定を下し、マークが付く訳ではありません。

また、第3者機関じゃなくても、出版社業界が何らかの統一基準を作って、その基準を元にマークを設定する、という事でもありません。

この「成人コミックマーク」は、あくまで、いち出版社の独自の基準によって付けられるマークで、はっきりとした明文化された明確な基準があるものではないのです。ただ、明文化されていないゆえに、それはそれでいろいろややこしいしがらみがあるのは確かです。この辺は非常にややこしい、業界的な話なので時間があれば、また別の機会にお話しできればと思います。

なので、このマークには「法的」な縛りはいっさいありません。出版社自身が「この本は大人向けの本なので、子供は買わないでね〜」という主張を謳ったマークなのです。

ただ、法的な縛りはないですが、各都道府県などでは、このマークを基準、もしくはその地方自治体が制定した「有害図書」や、そのたの条例などで縛りがある部分はあります。なので、法的な縛りがないから、未成年でも買えるじぇ! と、軽々に判断しないよう気をつけましょう!

もちろん、条例には売る方にも縛りが出てきますので、このマークを基準に、ゾーニングや、購入者の年齢の確認を義務化しているところもあります。そういう意味では、このマークも1つの基準になっている事は確かでしょう。



■なぜこのマークが登場したか?

そもそも、何故このマークが必要になったのでしょうか?

それは、1990年頃に起こった「悪書追放運動」が発端と言われています。

和歌山県のある主婦らが結成した「コミック本から子どもを守る会」という、いわゆる、子供が読める範囲にあるマンガに、やたらHなものがある!という告発が、全国に普及し、そういうエロいマンガに対して、バッシングが起こりました。

ただ、ここでやり玉にされたマンガは、俗に言う「エロマンガ」ではなく、少年、青年誌などで連載されていた、今で言う微エロ(といってもかなり刺激的!)なマンガで、一番バッシングを受けたのが「ANGEL」(著:遊人)や、「いけない!ルナ先生」(著:上村純子)でした。

いけない!ルナ先生


こういう流れを何とかやり過ごすために出版界が考えた方法が、主にそういうHなマンガを減らす(実際ルナ先生は回収、発禁になりました)のと、もう一つ自主規制として「成年コミックマーク」を発表し、ゾーニングを図るという事でした。

しかし、発表したはいいけれど、先にも言ったとおり、このマークを付けるべきマンガの明確な基準はありません。各社の判断に任された状況ではありました。

エロマンガ雑誌のマンガだったら、例えば今で言えばコアマガジンが出したマンガだったら、マーク決定か!という訳でもありません。青年系のマンガでも、出版社がこれはHなマンガだな〜と思ったら、マークを付けるという、今ではあまり考えられない、結構混沌としたよくわからない基準で、本当に手探りでした。

「成年コミックマーク」第1号は、『IKENAI!インビテーション(ヤングマガジンKCスペシャル) 3』(著:こしばてつや 講談社)で1991年2月の事です。

講談社のKCコミックが第1号なのです。

でもって面白いのが、3巻からマークが入ったという事です。すでに連載は始まっていたので、途中から入るという、不思議な現象が起きました。

「IKENAI!インビテーション」3巻から成年マークが!!


で、じゃエロマンガ(当時は美少女コミック)から刊行された単行本は全てマークが入っていたかというと、それもまた違います。

私が持っている1991年あたりのマンガを調べてみましたが、久保書店の「ワールドコミックスペシャル」シリーズは主に、エロ中心の単行本が多かったですが、ほぼ同じ時期にでたマンガでも、マークあり、なしが存在します。

戯遊群はマークあり、新田真子は無しです


ただ、新田真子(ちゃんと読めますか?)の「春が来た」のほうは、エロの部分はあまりない話が多く、同じレーベルでもこの当時は、エロの多さでマークを付けるか付けないかを判断していたようです。

さて、最初にやり玉に挙がった「ANGEL」や「いけない!ルナ先生」も、マークを付ければ晴れて出版が可能になりましたが、実はさらに版を重ねるとマークが消失します(笑)

のど元過ぎればなんとやら…


ちょっとわかりづらいですが、ルナ先生で見ると、他の出版社が復刊を行いますが、最初は「成年コミックマーク」版(真ん中のやつ)を出しますが、その後は、単に復刻版としてマーク無しで出しています。

これは、時代が変わり、もうこの程度ではマークなしでも世間的にOKだ!という事になった証拠でしょう。

「ANGEL」も同様です。

マークだけなくなってる


本当にマークだけなくなっています。この「成年コミックマーク」はある意味、一時的な猫だまし的なマークでもあったのかもしれません。



■なぜ黄色い楕円?

私が個人的に一番知りたいのが「何故黄色い楕円」なのかという事です(笑)
もちろん、いろんな形、色のマークがありますが、デフォルトとしてこの基準を最初に誰が提案し、派生系が広がっていったのかという事です。

第1号が「IKENAI!インビテーション」3巻、だという事はわかっているので、この単行本に印刷された「成年コミックマーク」が全ての原型だと言えるでしょう。(ただ、この時期は急にマークを付けないといけない事情から、シール型のマークもあったので、その原盤なども考慮すると微妙なのですが)

まるで「おじぎ人」がコピーを重ね、微妙に進化(変化)していくのと同様に、基準がないからこそ、見よう見まねでいろんな形に派生した!といえるでしょう。

ああ〜このマークを最初に考えた人が知りたい〜〜
だれか教えて〜(^_^;



■「成年コミックマーク」の基準とは?

いくら自主基準といっても、さすがに何らかの内部基準はあるはずです。ただ、今やその基準は、納得できる範囲というよりは、かなりボーダレスになっているいっても過言ではないでしょう。

私も大ファンの「柚木N’」先生のマンガを例に少し解説してみましょう。

「シシュンキのアレコレ」茜新社 2008)


これは柚木N’先生のTENMAコミックスの正当派エロマンガです。
エロなので、もちろん本番、汁、アナルといろいろなプレイがあります。

モザイクはこちらで入れてますが、本当は無しです


画像では「モザイク処理」を入れていますが、本当はカリ、クリトリス部分に黒スミがあるだけで、性器自体はほとんど描かれています。

さて、今度はマーク無しの、一般誌からの単行本を見てみましょう。

「フェチの品格」竹書房 2009


こちらは竹書房のBAMBOOコミックスNS。柚木N’先生の最新刊の「フェチの品格」ですね!
内容はというと…

性器部分が完全に白抜き


本番あり、フェラあり、と基本的に内容自体は普通のエロ専門雑誌とは変わりません。若干、アブノーマルなプレイがないようには思います。

ただ違う部分は、性器描写が完全にシャットアウトされている(白抜き)になっているところでしょうか?

もしこれが、編集による修正だったら(多分そうですが)、描き手としては描いているときは、マークありなしをほとんど意識せずに描いていると言う事になるかもしれません。

そのくらい、今では微妙な基準になっていると言えるでしょう。

もちろん、その基準は出版社によっても変わります。修正度合いの問題だけでなく、レイプはダメ、女子高生はダメなどのいろんな基準があります。またコンビニ売りにおける基準という、販売場所による基準などもあります。ただ、そういう基準は読み手には何ら知る手立てはないのです。


■「成年コミックマーク」はエロ出版界になにをもたらした?

バッシングにより、自主規制に追い込まれたエロ出版業界…

では、この規制は業界を冷えさせたのでしょうか?

いや違います、この規制を発端に、エロマンガ業界には一大、エロマンガバブルが訪れます。ゾーニングされた事によって、ある意味正々堂々とエロが買える、読めるという、グレーな位置にあったエロが、はっきりとしたのです。

主に1990年代後半まで空前のエロ漫画出版ラッシュが始まり、月に100本以上のマーク付きマンガが出版される黄金期が来るのです。規制が発端だった事を考えると全く皮肉な結果です(^_^;

現在、また表現の規制の流れが起ころうとしていますが、実は業界ではこのような事がささやかれてます。

「もう一度規制が始まらないかな? そうすれば、またバブルが来るかも?」

という噂です(^_^;

ただ、個人的にはそうは思いません。まず、出版界全体の本自体が売れないという不況、またゾーニングでは回避できない表現自体の規制という面に置いて、状況はかなり違います。より地下に潜る事はあるかもしれませんが、バブルのような現象にはならないのではないでしょうか?



■まとめ…

と、駆け足で解説しましたが「成年コミックマーク」はあくまで自主規制という枠組みから発生した、出版者側のフラグに過ぎないのです。しかしながら、一般マンガエロと、専門エロのボーダーがより曖昧になり、マーク自体に意味もあまりなくなったかのようにも見えます。

ただ、最近の出来事でいうと、コアマガジンで出版された、瓦敬助先生の「菜々子さんシリーズ」は3冊目にして、マークなしという英断で単行本が発刊されました。

3冊目はマーク無しよ!


コアマガジンの同じレーベルなのに、マーク無しという、内容でしっかり判断する例はまだ健在です。逆に言うと、エロ専門誌でもエロがなくてもいいんじゃない!という、さらにボーダレスが進んだ結果なのかもしれません(^_^;


あ、最後に、TOPの画像の丸の部分の拡大図を載せておきます。

よく見ると…


こう言うのって、前衛アートになりますかね?(^_^;
 
58 ero

「女だらけのヨネケン(米倉けんご)座談会...
TOP
「エロマンガノゲンバ Vol.1」発見!...