「プロ漫画家向け確定申告講習会」に参加し...
TOP
三峯徹御大のデビュー投稿作が確定される

2012
「まんがかぞく 2」とエロマンガ
Check
ども、稀見理都です。

個人的に好きなマンガのジャンルに「マンガ家マンガ」(マンガ家が主人公になっているマンガで、内容がマンガに関係のあるもの)があるんですが、2年前ぐらいから多くの種類が出はじめ、その勢いは衰えず、もう一つのジャンルとして完全に確立した感じがあります。

今日は、その中でも大島永遠(とわ)先生の「まんがかぞく 2巻」が面白く、かつエロというジャンルについて描かれていたので、少し取り上げたいと思います。

「まんがかぞく 2巻」(著:大島永遠 双葉社)


「まんがかぞく」というタイトルが何を示すかというと、大島家の父、母、娘2人の全家族4名がみんなマンガ家という、まさにマンガ一家なわけです。

父は、硬派マンガ「一撃伝、バツ&テリー」などで有名な、大島やすいち。
母は、少女マンガからレディースコミックまで幅広作品を描く、川島れいこ。
妹は、4コママンガ系マンガ家、三島弥生。

そして、この「まんがかぞく」の作者の大島永遠、という凄い構成(^_^;



その家族が織りなす”まんが道”というか、ノンフィクションを描いたマンガ家マンガが、この「まんがかぞく」であり、今回紹介するのはその2巻になります。


■とにかくエロマンガを描かせろ!!

この本の著者でもある、大島永遠先生と言えば、2006年にアニメ化された「女子高生 Girl's-High」(連載は双葉社・コミックハイ!)などで有名です。リアルな女子高生ライフをコミカルかつ少しエッチ(正確には下品?)に描いたこの作品はかなり話題になりました。

「女子高生 1巻」(著:大島永遠 双葉社)


2006年にアニメ化された「女子高生 Girl


私もこのアニメが好きで、毎週観ていた記憶があります(EDの梅津さんの絵が綺麗で印象的でした)。

そんな永遠先生ですが、デビューこそ一般誌ではありましたが、その後いろいろ行き詰まり、とにかくマンガを完成させたいという気持ちから、友人の編集者が立ち上げた「美少女マンガ雑誌」に代原(何かあったときのための代理の原稿)として載り、その後定期的にエロマンガを描く事になります。

「まんがかぞく 2巻」にはその経緯が詳しく描かれています。

友人の編集者が立ち上げた雑誌に載せてくれ!


描きたい欲求にかられてた永遠先生は、とにかく描きたいと言う気持ちから、あまり詳しくはなかったエロマンガ業界に飛び込みますが、いきなりいろいろな壁にぶち当たります。

エロを描くにはこんな技術が必要?!


エロパワーが何より重要!!


もちろん、エロマンガを簡単に考えていたという事はないは思いますが、それ以上に特殊な技術(パース、コマ割、エロノルマ)という、求められているものが非常に高いという事を知ります。さらに苦しめたのがテクニック以上に必要な「エロ魂!」。

しかし、そこは負けず嫌いな永遠先生。持ち味の根性で作品を生産していきます…

が、努力ではどうにもならない?壁というか、エロマンガ家としての「リビドー」に限界を感じていきます。

性欲の限界!! これがエロの世界の限界か!?


エロを描き続けるという事が、如何に難しいかと言うことを、描き続けることで悟ることになります。

こうして20代前半にして、作品のジャンルを成年マンガから離れる事になり、青年の方へ仕事の場を替えていくことになったわけです。

個人的に面白いと思ったのは、永遠先生のエロマンガを描く過程です。先生の場合は、エロシーンを描くときと、ストーリーパートを描くときでは、全く使う脳が分かれているようで、もともとストーリーから作り上げるタイプの先生の場合、エロを後回しにして、エロノルマを残して最初にストーリーを埋めてしまいます。

当時の雑誌には1作につき8Pのエロシーンのノルマがあったと書かれていて、最後の最後にエロパワーを充填し、そこを仕上げるという。その過程がもの凄く”疲労”だったと…

もちろん、エロマンガ家の人の仕上げる過程は人それぞれです。永遠先生とは逆に、ストーリーが全然浮かばないで、とにかくエロシーンを先に描き、前後に話を付け足していく、という先生もいます。

「エロマンガは何でもあり!!」とは言われますが、エロという縛りがある事は実はかなり難しい縛りでもあるとは思います(エロノルマがなかった時代は、本当の意味で何でもありでいたがw)。

ただ永遠先生が、成年コミックジャンルというものが、エロマンガだから何でもありで楽しく楽にかける!という訳ではなく、プロ意識がなければ決して出来ない、巧みで大変な仕事であると、言ってくれているようで非常に嬉しかったです(^_^

個人的には、女流作家さんは30代が一番のってくると言われているので(本当か?)少し早すぎたのかも、と思ったりしています(^_^;


■大島永遠先生の描かれていたエロマンガ…

さて、作中にも少し出てきましたが、永遠先生の知り合いの編集者の方が立ち上げた成年コミック誌とは何だったのかというと、シュベール出版(2003年倒産)という出版社から発刊されていた「コミック零式」という雑誌になります。

「コミック零式」(シュベール出版 1998年〜2003年)


決して大手の美少女コミックではなかったですが、作家陣は毎回豪華で、結構ファンが多かった雑誌の1つでもありました。

大島永遠先生は「まんがかぞく」の中では、あっという間に枯れたような感じで当時のことを描かれていますが、決してそうではなく成年コミックを3冊も出すぐらい、かなりのエロ作品を送り出しています。

そして、永遠先生の初単行本は成年コミックで2001年に発行されている「PRESENT」になります。

「PRESENT」(著:大島永遠 シュベール出版)


もちろん、ちゃんとエロマンガになっています!


作中に少し出てきますが、この初単行本の中に、成年マンガとしての初作品「ピエロ」も収録されています。

成年向け初作品の「ピエロ」


どの作品も”しっかりエロマンガ”になっていて、非常に楽しく読む事ができ、決して裏での「エロパワー苦労」があったとは想像も付きませんでしたが、「まんがかぞく」を読んだあとにもう一度読み直してみると、また面白かもしれません(笑)

ただ、一番永遠先生らしいと思った部分が、巻末の4コマエロマンガの部分でうかがえます。

女子高生のエロエピソードなどの4コマが!?


単行本の巻末に、主に今時の女子高生の「エロエピソード」のような4コママンガが10本ぐらい載っているんですが、内容がほとんど「女子高生(双葉社)」なんです。
ある意味、「女子高生」の原点がここにあったのかと思うぐらい、今見ても面白いです。

先生は、エロを描く難しさを描くことで理解し、方向転換をしたわけですが、その理解があったからこそ、自分に向いているマンガの方向性を見いだせたのではないでしょうか? そして、案外近い場所だった(エロ下品?)だったという(笑)

この単行本を読み返して、何となくそういうことを感じた次第です(^_^;


■もちろんエロ以外の話題も面白いよ!!

今回は「まんがかぞく 2巻」の中の、「官能と私」という部分だけに絞って、作品の紹介とその周りの話をしましたが、もちろん他の部分、健康の話、アニメ化までのドキュメントなど、面白い話が目地を押しです! 好評連載につき、続巻も出るかと思うので、注目して見ていきたいですね!!( ^_^)/



 
15 ero

Re:「まんがかぞく 2」とエロマンガ
2巻発売されていましたか。早速買ってきます。
ところで、
零式の版元なのですが、記憶によるとリイド社だったような気がしていたのですが。
単行本の方で確認してみると確かに「シュベール出版」でした(手元にあったのが「博士のストレンジな愛情」というのがまた;^^)。
ただ、検索をかけてみるとリイド社が版元になっている"零式コミックス"というのがヒットします。
倒産による版元の変更が途中であったのか、ご教示頂けると幸いです。
あと、大島永遠がらみだと二階堂みつきについての話題をお聞きしたいとかんじました。
0000-00-00 00:00:00 | CommentBy びぃわいじぇいしっくす
「プロ漫画家向け確定申告講習会」に参加し...
TOP
三峯徹御大のデビュー投稿作が確定される