ども、
稀見です。
ようやく今年抱えていた本業の仕事が終わり、あとはコミケ!という年末の大仕事を残すのみとなって、少しホッとしている状態です。
(といいつつ、会社の決算があるので、やることは多いのですが…)
さて、今回は今年の9月に発行された、注目すべきインタビュー本のご紹介を…。
いや、本当はもっと早くご紹介をしなくてはいけなかったんですが、自分の同人誌の編集やら、とにかくじっくりこういう記事を書く時間すら取れない状態だったので、こんなにも遅れてしまいました。本当に申し訳ないです〜。
今回紹介するインタビュー本は、もう僕のやっている活動からすれば、絶対に避けられないジャンルのインタビュー。そう「
美少女系H漫画家」さんへのインタビュー集という、もうタイトルだけで即買いの素晴らしい1冊です。
紹介する本は「
ぼくたちの80年代 美少女マンガ創世記」(著:おおこしたかのぶ)です。
| 「ぼくたちの80年代 美少女マンガ創世記」(著:おおこしたかのぶ 発行:徳間書店) | |
内容は、主に80年代に活躍された「H系漫画家」さん16名へのインタビュー集として構成されています。
もともとは、白夜書房から発行されている投稿系エロ雑誌の「
うぶモード」の中の企画「オタクの細道」で連載されていたものに追加インタビューを加え、まとめたものになります。僕もこの連載はファンでよく読んでいました。今でも
ネットで公開されているものがあります。
「H系漫画家」というジャンルはなかなか一言では説明しづらいジャンルなのです。エロ漫画じゃないのと言うかもしれませんが、基本は全年齢指定で子供でも読む事ができるジャンルではあるんですが、そもそも80年代は「
成年コミックマーク」というものが無かったので、その境界はかなり曖昧で、エロの度合やマンガの方向性もいろいろあり今の感覚とはまた違う部分もあるとは思います。
ただざっくりと、やっぱり男の子のためのHな表現がメインのマンガを指すジャンルである事は間違いないでしょう。今回紹介されている16名の作家さんは、ライトなHマンガ家から成年向けのハードコアも描くマンガ家さんもいて、そういう意味ではかなり幅は広い感じです。
登場する作家さんは、登場順に、えびはら武司、山本直樹、ものたりぬ、大島岳詩、河本ひろし、浅井裕、浦嶋嶺至、みやすのんき、町野変丸、りえちゃん14歳、山野一、田沼雄一郎、新貝田鉄也郎、ダーティ・松本、中島史雄、の16名(敬称略)
著者でフリーライターの
おおこしたかのぶ氏は、元美少女コミック誌(桃園書房のコミックジャンボ等)の編集に携わっていた経験から圧倒的な情報量を絡ませつつ、巧みに当時の様子などをふり返りながら話を進めていきます。
インタビューされたメンバーに、おおこし氏が編集に携わっていた「コミックジャンボ」で作品を描かれていた作家さんが多いのは、そういう理由もあるのでしょう。
| 「コミックジャンボ 1989年1月号」(桃園書房) | |
この号は「コミックジャンボ」(桃園書房)の1989年1月号なのですが、インタビューメンバーの、河本ひろし先生、ものたりぬ先生、浅井裕先性の名前も…。
蛇足ですが「コミックジャンボ」という雑誌は、創刊当時(1988年1月)は、もう少し硬派な感じの雑誌だったんですが、表紙に河本先生の可愛い女の子に変更し、自ら「
軟派な美少女コミック誌!」と謳ってにリューアルした雑誌だったんです。でも、その変更が功を奏し、売上もグンとアップと大成功したんです。
その事は、この本の中でも少し語られていますが、さらに詳しい裏話は僕の「エロマンガノゲンバ 休刊号」にも載っていますので、是非お確かめ下さい(宣伝か?)。
(ちなみに、内情は河本ひろし先生ではなく、しのざき嶺先生が語ってくれました!)
関係ないですが、この表紙の号に「1号」って書いてあるんですが、創刊はこの1年前で、なんでこのタイミングでの通巻リセットなんでしょうか未だに謎です(笑)
おおこし氏と僕は世代で言うとだいたい10年の年の差があって、この差が今回インタビューした先生の選考の違いが出たんではないかと思っています。(被りもありますが…)
僕の年代が衝撃を受けた(主に性的に)作家さんというと、やっぱり森山塔先生(山本直樹)先生なんですが、おおこしさん世代だと、やっぱり永井豪先生、特に「
ハレンチ学園」辺りなんですよね。いや、もちろん僕ももの凄く小さいときに読んでいた記憶はあるんですが、何というか幼すぎて性の目覚めとしては時期尚早だったんですよね。小学生が下品なモノが好きな感覚で楽しむ事はあっても、「エロス」までは行かなかったんです。
なので、おおこしさんがインタビューされた作家さんもやっぱり永井豪世代なんです。これは、僕がインタビューした作家さんが、ほぼ森山塔世代だったという部分と妙に一致して、世代は違えど聞き手と作家が同じ時代を生きてきたという共感を得られて読んでいてすごく楽しかったです。
「ぼくたちの80年代 美少女マンガ創世記」の中では、インタビュー以外にも、Hマンガに関するちょっとした歴史的コラムなどが要所要所にまとめられているのが興味深いところです。貸本から、エロ劇画、美少女コミック、そしてエロ漫画?へと、大衆文化のなかでどちらかというとアウトロー、サブカルチャーとしてその文化を継承してきた「エロ漫画」の歴史について、簡単ではありますがまとめられています。
エロ関係の業界人にとって避けられなかった事件についても、もちろん触れています。これはおおこし氏が編集者だったからという部分もあるとは思いますが、ほぼ全員の作家さんに、90年初頭の俗に言う「宮崎事件」が作家に及ぼした影響などについて聞いている部分が非常に興味深いです。
実はこの事件については、僕の同人誌「エロマンガノゲンバ 休刊号」でも同様に25名の作家さんに、この事件の影響についていろいろと伺っています。
(やっぱり、この事だけは避けて通れませんからね。あと、この後のエロマンガバブルについても伺っています)
事件の影響で重版がなくなった、本が出なくなった、修正が厳しくなったなど、かなり厳しい状況に追いやられた、という話もよく聞きます。実際、インタビューでもそういう話が多く出ましたが、意外だったのが、いや自分はそんなに影響は出なかった。いや、むしろ仕事が増えたなどの
ポジティブな感想も結構出たんです。
やはり、当時影響がそうでもない人は特に訴える事はなかったわけで、どうしても辛い思いをした方の意見ばかりが大きくなってしまったことは確かです。そういう意味では、みんながみんな大変な目に遭ったわけではなく、
影響は段階的にグレーな状況だった、という部分が今回のインタビューでよく分かった部分ではありました。
今回、僕のインタビュープラス、おおこし氏の16名(でも被っているのが4名)の計37名の当時の証言は、規制問題の研究などをされている方にとっても、非常に重要な証言になるのではないかと思います。そのためにも、是非両方の本を読み比べていただければ幸いです(結局自分の本の宣伝か!)。
エロマンガノゲンバ Vol.10
2014年12月発行 190P 1,500円 (画像をクリックすると詳細が見れるよ!)
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インタビュー特集!
- 森山塔
- うたたねひろゆき
- 千之ナイフ
- 田沼雄一郎
- 陽気婢
- 三峯徹(他20名)
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※ 書店委託は、定価より若干高めになります。
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本の紹介と言うよりは、自分のインタビューと共感する所ばかり言って、全然紹介になっていませんね。申し訳ありません。
でも、あえて共感したことを書くと
・ウィキペディアは当てにならない
・インタビュー場所の定番は「ルノアール」
という部分は、いや〜全く同じ感覚で、勝手ながら「そうだよね、うんそうだ!」と思いながら読まさせていただきました。
いや、ほんと「ウィキペディア」のマンガ家さん情報って、当てにならないですよ。インタビューをしようと思っている方は、本当に話半分程度に考えておかないと、恥じかきますから(笑)
エロ関係のなかなか記録に残らない、当事者もあまり話したがらない&忘れがちな、こういうインタビュー、証言、は本当に貴重な資料だと思いますので、自分の若い頃(
特に性の目覚め)を思い出すと同時に、是非読んでいただければと思います。もちろん、拙著の「エロマンガノゲンバ 休刊号」もご一緒に手にとっていただければ幸いです(^_^;